自動車のテレビCMで美しい風景が現れることがある。例外なく外国の風景であるが、
これは発売前の新車を国内で走らせて人目に晒す訳にはいかない、ということで理解でき
る。その風景がアルプスらしい時は、アルプス峠道同好の友人と走ってみたいね、と話が弾む。
アウディがアルプス峠道研究家のKさん主宰のアルプス峠道人気投票で第1位を獲得し
たステルビオ峠を走らせた時は、ネットの公開掲示板にトピックスを立てて大いに盛り上
がった。この峠はイタリアのヴェノスタからスイスに向かう峠で、アルプスにあって車で
越えられる峠道として第2位の標高2758mを誇る。ヴェノスタ側の斜度10パーセントを越える
つづら折れが20km余りも続くさまは感動的である。アウディはその後、明らかにアルプスと
思われる山並を背景にしたポスターを作った。これは謎の場所であったがKさんがオーストリアの
グロス・グロックナー道路からの東チロルの風景の逆焼きであると謎解きし、仲間を驚嘆させた。
そしてステルビオ峠の絶景で感動させてくれたあのアウディがなんてえ事をしやがる、と皆で憤慨した。
そのグロス・グロックナー道路をトヨタがクラウンを走らせた時は一体あの道路のどこ
をどう走っているのかが話題になった。背後の風景をコマ毎に解析した結果、一方向では
なく行ったり来たりの道に迷った状態で走らせているのだと仲間内で結論付けた。
ヤマハは大型バイクに熟年夫婦2人乗りでスイスのズーステン峠を走らせた。この峠は
観光目的で開かれた峠で、インターラーケン側の連続カーブはドライバーやライダーを夢
中にさせる。CMは、そのバイクがアイガー東稜を望むグロス・シャイデックを走るシー
ンに続くのであるが、グロス・シャイデックは車両進入禁止であるので、こういうのは反則技である。
最近ではそんな反則技どころか背景をCGで作っていると思われるCMもあり、
きれいな山岳風景でも油断できない。
(2010年12月21日 )