災難に遭う芸術作品 

 

 世の中には、見る者を狂わせ、そのために自らが災難に遭う絵画や彫刻が少なくない。中には繰り返し襲われるものがある。 盗難に遭うことも珍しくなく、『印象・日の出』のような美術史上のエポック作品までもが盗まれたりする。

  • ピエタ像(ミケランジェロ)、バチカン・サンピエトロ寺院
     その完璧な美しさに狂わされた地質学者がハンマーでマリアを破壊した。若き沢木耕太郎は「深夜特急」 の中でその美しさにかなり危なく魅せられている。
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  • 鏡を見るヴィーナス(ベラスケス)、ロンドン・ナショナルギャラリー
     裸婦像は女性蔑視であるとする女権拡張運動家にお尻を切られた。実はベラスケス作の裸婦像はこれ一枚しかなく、 無数にある裸婦像からこれを選んで襲った方も目が高い。

  • フォルナリーナ(伝ラファエロ)、ローマ・イタリア国立絵画館
     半裸の等身像で、可愛さ余ってキスしようとしたり、抱きつこうとする輩が絶えない。左上腕の腕輪の文字が有名。 ウチのオクサンはその字を読もうと近づきすぎて赤外線感知に引っ掛かり、大音響のベルを鳴らしてしまったが、 すっ飛んできた警備員は優しく注意したのみだった。
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  • 夜警(レンブラント)、アムステルダム・オランダ国立美術館
     複数回襲撃されている。この絵は有名で大きくて目立つのに、周辺がオープンで絵の前に到達しやすい、 つまり手軽に襲える、というのが理由の一つではないかと私は密かに思っている。

  • ゲルニカ(ピカソ)、マドリッド・ソフィア王妃美術センター
     実際に襲われたことは無いらしいが、制作当初から政治的論争の絶えない絵である。拳銃で武装した警備員が2名こっちを睨んでいて、 襲撃しようとすると多分その場で射殺される。

  • ヤコブ・デ・ヘイデン三世の肖像(レンブラント)、ロンドン・ダリッジ美術館
     4回盗難に遭い、その度に元に戻ってきたとしてギネス公認だそうである。今は絶対だという警備の中にあるというが、 ならばと5回目に挑戦する輩が出なければ良いが。



                                          2019年7月11日

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